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地盤調査と基礎設計-1

平成12年4月1日に施行された「住宅の品格確保の促進等に関する法律(品格法)」により、建物瑕疵保証と地盤瑕疵保証が始まって18年、今ではすべての住宅が地盤調査をおこない、地盤に関して10年間の瑕疵保証保険に加入するようになりました。(最近では20年保証もあります)

これだけ聞くと、とても安心できる制度・保険のように聞こえます。

しかし、これまでに家を建てられたほとんどのお施主様はこの制度の本当の保険のしくみをご存知ないのではないかと思ってしまいます。

先日、「他社で計画を進めていたが、地盤改良工事費用で予算が合わなくなった。分離発注で建物の予算を削減して計画を進めたい」というお問い合わせをいただきました。

土地を現調させていただき、地盤調査の解析結果をお持ちいただきました。

スウェーデン式サウンディング(SNS)による地盤調査をおこなっており、解析結果は「改良工事が必要」という判定で「砕石パイルによる地盤補強工事」または、「柱状改良工事」をおこなってくださいというものでした。

お施主様に建物の設計図書を見せていただきましたが、大手のビルダーさんということもあり、1邸ずつ基礎の設計(構造計算)をおこなう訳ではないとのことでした。

おそらく、平成12年建設省告示第1347号に地盤の長期許容応力度に対する基礎形状が明記されていますので、明記されている基礎を「標準仕様の基礎」としてあるようです。

建物荷重建物形状バランスも1邸ずつ違いますが、大量生産をしなければならない大手メーカー、大手ビルダーの場合はしかたないんだと思います。

本来、基礎の設計をするときは、建物の荷重を算出し、地盤の調査結果から出る地盤の長期許容応力度に対して沈下しないかを確認しなければなりません。

基礎形状は、地盤の強さ、建物荷重、建物形状、バランスにより構造計算の上、決めるものです。

ここで、解析結果により出た地盤の長期許容応力度に基づき基礎設計をおこなえば良いのですが、何より気になったことがひとつ

地盤調査の解析をおこなった会社、改良工事をおこなう会社が、建物の施工をおこなう大手ビルダーの子会社だったということです。

皆さん、改良工事をしたほうが利益が上がることになっている仕組みの中での「調査・解析結果」を信用すること自体に無理があると思いませんか?

セカンドオピニオンという訳ではないですが、地盤調査をする会社、解析する会社、保証する会社の各々になるべく利害関係がない会社を選択し、再度、地盤調査からやり直すことにしました。

ビィック株式会社の表面波探査法による地盤調査

特定非営利活動法人 NPO住宅地盤診断センターの地盤保証

上記によって地盤調査・解析をおこなったところ、「改良工事必要なし」で地盤保証可ということでした。

「沈下量計算による予想最大傾き(rad)」0.1/1000でした。

0.1/1000とは改良工事が必要などころか極めて良好な地盤ということです。

(平成12年建設省告示1653号のなかで6/1000以上の傾斜が認められた場合、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高いとされています。)

良好な地盤という結果が得られましたので、あとは即時沈下時に不同沈下しないように地盤に対して建物の荷重をバランスよく伝える検討をして基礎の設計をすることになります。

この結果、このお施主様は無駄な改良工事をすることもなく無事に完成することができました。

(※1.地盤が良好でも建物を建てた場合、若干ですが、建築後の早い時期に沈下を起こします。これが即時沈下です。このとき、傾いて沈下すればこれも不同沈下です。)

(※2スウェーデン式サウンディング(SNS)による地盤調査がダメで、表面波探査法が良いということではありません。今回のケースの逆もありました。)

固い地盤でも、建物・基礎と地盤のバランスが悪ければ、不同沈下する可能性・危険性があるため、沈下量計算をは

じめ、即時沈下の検討が必要となります。

 

しかし、ここ数年、このようなご相談を受ける機会も増えておりますし、巷で聞く地盤改良工事の件数も、住宅着工数の減少と反比例して増えてきているように感じます。

あいかわらず住宅メーカー、ビルダーさんの地盤改良率も高い水準ですし、お施主様のため全棟地盤改良が当社の売りなんていう会社もあります。

木造住宅に限って言えば、築40年前後のわたしの実家、親戚の家、私の友達の実家、友人の親戚の家、またはリフォームのご相談で訪問させていただく家で不同沈下している家なんてほとんどありません。

全部、地盤調査や改良工事など全くない時代に施工された家です。

(諫早の有明海沿岸に近いエリア等の地盤が極端に良くないエリアを除く。)

私達も、ほんとうに悪い地盤での地盤改良工事は必要だと考えますが、どうしてこんなに地盤改良工事が多いのでしょう。

次回はその理由として考えられるこの制度の仕組みについてお話します。